2017/3/31

突然世界の終わりがやって来た。

ネットで見たわけではない、手紙が来たわけでも、ましてや誰かに直接言われた訳でもない。ただ世界が終わる事が分かったのだ。

もしかしたらまだ自分しか知らないのかもしれない。僕だけが世界の終わりを知っているただ一人の人物なのかもしれない。だとしたら僕はなんて幸運なんだろう。

少し気分を高揚させながら外に出ると、誰も彼もが普段と変わらない生活を送っている。もう来ない未来の予定を手帳で確認しながら顔を曇らせている会社員、儚い青春の一ページを謳歌している学生達は自分達の存在を主張するかのように大声で会話している。

街並みを眺めれば時間とともに明滅する建物の光が時間を感じさせる。そんな風景を眺めていると世界の終わりが突然来る事に恐れを感じ始めた。確かに世界は終わるが一体どうやって終わり、いつ終わるのかが分からないのだ。教えることが出来ない。

とりあえず右のポケットから携帯電話を取り出しSNSアプリを起動する。

 

「みんなは気づいていないかもしれないけれど、近いうちに世界は終わる。」

 

誰かにこの事を知ってほしい一心で文章を送る。しかし、時間とともに気づいていない人たちの言葉とともに画面上部から下へと自分の思いは流れて消えていった。

気づいてくれない事に孤独を感じ始める。すると自分の目の前が歪み始める。世界の輪郭と自身が混ざり合っていくのを感じる。世界の終わりが始まったのだ。

きっと誰も気づいていない、誰でもいいから自分の知らせに気づいて欲しい。その一心でもはや空間と空間の境目も分からぬまま足を前に進ませる。

足と空間が混ざり合い輪郭を失い始める。前へ進み、誰かに伝える。絶対に伝えなくてはならない。感覚もない足を想像しながら気持ちとともに前へ進ませる。

終わりの合図が響いてきた。くぐもった音が心臓の音のように世界に響いている。結局自分は何もできなかった。喪失感だけが世界を支配していく。

すると目の前に光の門が現れた、この門をくぐれば世界を元に戻せる気がする。

死に物狂いで光に近づく、視界が光に包まれていく、甲高い音が耳を伝い頭を支配する。

体に冷たい感覚が伝う。その瞬間自身は拡散した。何もできない自分が最後に気づくことが出来た。

 

世界が終わるのは僕だけだったのだと。